売買契約書ってどこを確認すればいいんだろう?
不動産の売買契約を控えていると、そう疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
売買契約書には専門的な言葉が並び、どこを重点的に確認すればいいのか分かりにくいものです。
結論から言うと、不動産売買契約書には売買代金だけでなく、引渡しの時期や契約解除の条件、住宅ローン特約など、重要な取り決めがまとめて記載されています。
契約書の内容は取引によって異なるため、署名・押印する前に、自分に関係する条件まで確認しておくことが大切です。



私が司法書士として働いていたころ、個人間売買の売買契約書を作成することがありました。
契約書を作るときは内容に間違いや矛盾がないか、かなり神経を使って確認していたのを覚えています。
それだけ契約書は細かい部分まで確認する必要がある書類だと感じています。
✅不動産売買契約書とは何か、重要事項説明書との違い
✅契約書に記載されている主な内容
✅買主として特に確認しておきたいポイント
✅契約書を作成して締結するまでの流れ
✅印紙や保管期間など、実務上よくある疑問
不動産売買契約書とは?
不動産売買契約書とは、不動産の売買について売主と買主が合意した内容を書面にした契約書です。
売主と買主が合意した内容を書面にしたもの
売買契約書には、いつ・いくらで・どのような条件で不動産を売買するのか、売主と買主が話し合って決めた内容が記載されます。
不動産売買は、契約書を作成しなくても売主と買主が合意すれば契約自体は成立します。
ただし、不動産のような高額な取引では、あとから「言った」「言わない」のトラブルにならないよう、合意した内容を書面に残しておくことが欠かせません。
売買契約書を作成する役割
売買契約書の大きな役割は、契約内容を明確にし、あとからトラブルが起きるのを防ぐことです。
代金や引渡し時期だけでなく、契約を解除できる条件や、問題が見つかった場合の扱いなども書面にしておくことで、双方の認識のズレや契約後のトラブルを防ぐことにつながります。
売買契約書がないとどうなる?
契約書がなければ、代金や引渡し時期といった重要な条件について、あとから認識のズレが生じたときに契約内容を確認する重要な資料がなくなってしまいます。
不動産のような大きな金額が動く取引だからこそ、書面で契約内容を残しておく意味は大きいといえます。
重要事項説明書との違い
重要事項説明書は、契約するかどうかを判断するために、物件や取引条件についてあらかじめ説明を受けるための書類です。
一方、売買契約書は、売主と買主が合意した契約内容を書面に残すための書類です。
重要事項説明書についてくわしく知りたい方は別記事もあわせてご覧ください。
不動産売買契約書の主な記載事項
不動産売買契約書には多くの項目が記載されますが、大きく分けると次のような内容になります。
| 項目 | 主な内容 |
|---|---|
| 不動産の表示 | 所在、地番、土地面積、 建物の情報など |
| 売買代金・ 支払方法 | 売買代金、手付金、 残代金の支払時期 |
| 面積・境界 | 公簿売買か実測売買か、 境界や越境物の扱い |
| 所有権移転・ 引渡し | 所有権が移る時期、 引渡し日、登記の時期 |
| 負担の除去・ 精算 | 抵当権などの処理、 固定資産税の精算 |
| 危険負担・ 契約解除 | 引渡し前の損傷の扱い、 解除条件、違約金 |
| 反社会的勢力 の排除 | 反社会的勢力に該当しない ことの確約 |
| 住宅ローン 特約 | ローン審査に通らなかった 場合の扱い |
| 契約不適合 責任 | 引渡し後に問題が 見つかった場合の扱い |
| 特約事項 | その物件・取引 だけの個別条件 |
それぞれの項目について、もう少し詳しく見ていきましょう。
不動産の表示
対象となる不動産を特定するため、所在や地番、土地面積、建物の構造などが記載されます。
登記簿の情報をもとに記載されるのが一般的です。
売買代金・手付金・支払方法
売買代金の総額と、契約時に支払う手付金、残代金の支払時期が記載されます。
手付金の性質や返還されるケースについては別記事で詳しく解説しています。
土地面積・売買代金の精算
土地の売買では、登記簿上の面積で取引する「公簿売買」なのか、実際に測量した面積で取引する「実測売買」なのかが記載されます。
実測売買の場合は、測量の結果によって代金を精算する条件も確認しておきましょう。
境界・越境
隣地との境界がどこにあるか、塀や樹木などの越境物がないかについても記載されます。
境界があいまいなままだと、引渡し後にトラブルになることもあるため重要な項目です。
所有権移転・引渡し
不動産の所有権がいつ買主へ移るのか、実際の引渡しはいつ行われるのかが記載されます。
契約例として、買主が売買代金の全額を支払い、売主がこれを受け取ったときに所有権が移転すると定められることがあります。
ただし、法律上必ずこのタイミングで移転すると決まっているわけではないため、契約書でどのように定められているか確認しておきましょう。
抵当権などの負担の除去
売主に住宅ローンが残っている場合、決済に合わせて抵当権をどのように抹消するのかが記載されます。
抵当権が付いていること自体は珍しくなく、抹消されたうえで引渡しを受けるのが一般的な流れです。
固定資産税などの精算
固定資産税や都市計画税は、引渡し日を基準に、売主・買主の間で日割り精算するのが一般的です。
精算の基準日がいつになっているかを確認しておきましょう。
危険負担
引渡し前に、災害などで物件が損傷してしまった場合、その負担を誰が負うのかが記載されます。
契約解除・違約金・損害賠償
どのような場合に契約を解除できるか、解除した場合の違約金や損害賠償について記載されます。
反社会的勢力の排除
売主・買主のいずれも、反社会的勢力に該当しないことを確認する条項です。
近年の不動産売買契約では一般的に盛り込まれています。
住宅ローン特約
住宅ローンの審査に通らなかった場合、契約をどう扱うかが記載されます。
住宅ローン特約の詳しい内容や注意点は、別記事でくわしく解説しています。
契約不適合責任
引き渡された不動産が、契約の内容に適合していなかった場合の責任について記載されます。
例えば、契約上は問題がないとされていた部分に、雨漏りやシロアリ被害、給排水管の故障などが引渡し後に見つかった場合が考えられます。
責任を負う範囲や、通知できる期間が定められていることが多いため、契約書のどこに書かれているか確認しておきましょう。
特約事項
そのほか、その物件や取引だけに関わる個別の条件が、特約事項として記載されます。
契約書の後ろのほうに記載されていることが多く、目立ちにくい項目ですが、記載されている場所と重要度は関係ありません。
一般的な条項だけでなく、特約事項にも必ず目を通しておきましょう。



私自身、契約書を確認する際は、この特約事項にとりわけ注意して目を通していました。
買主が売買契約書で特に確認したいポイント
記載事項をひととおり確認したら、契約前には特に次のポイントを重点的に見ておきましょう。
- 購入する物件の表示(所在、地番、家屋番号など)に間違いがないか
- 売買代金だけでなく、手付金の金額と支払時期に間違いがないか
- 引渡し日や所有権移転の時期が、自分の希望や住宅ローンのスケジュールと合っているか
- 手付解除ができる期限や条件
- 契約解除の条件と、解除した場合の違約金の内容
- 住宅ローン特約が付いているか
- 利用する金融機関や融資金額が、予定している内容と合っているか
- 住宅ローン特約による契約解除の期限がいつまでか
- 契約不適合責任の範囲や、通知できる期間
- 個別の特約事項に、見落としている条件がないか
売買代金だけを確認して安心してしまうと、引渡し時期や特約事項など、ほかの重要な条件を見落としてしまうことがあります。
契約書全体に目を通したうえで、疑問点は契約前に確認しておきましょう。
不動産売買契約書を作成して契約するまでの流れ
売買契約書は、次のような流れで作成・締結されます。
重要事項説明を受ける
契約に先立ち、宅地建物取引士から重要事項説明を受けます。
売買契約書の内容を確認する
重要事項説明を踏まえたうえで、売買契約書の内容を確認します。
実務では、重要事項説明を受けたあとにそのまま売買契約へ進む流れがよく見られます。
事前に契約書を確認できる場合は、早めに目を通して疑問点を整理しておきましょう。
売買契約書に署名・押印する
内容に納得できたら、売主・買主それぞれが売買契約書に署名・押印します。
このとき、買主は手付金を支払います。
売主・買主が準備するもの
契約当日、一般的に準備するものは次のとおりです。
| 準備するもの | |
|---|---|
| 買主 | 本人確認書類、印鑑、手付金 その他不動産会社から案内されたもの |
| 売主 | 本人確認書類、印鑑、登記済証または登記識別情報(確認用として) その他不動産会社から案内されたもの |
- 登記済証や登記識別情報は、一般的に「権利証」と呼ばれるものです。
- 必要なものは取引内容によって異なります。売買契約の前に、不動産会社から案内された持ち物を確認しておきましょう。
- 住民票や印鑑証明書など、登記に必要な書類は、契約時ではなく決済に向けて準備することがあります。
不動産売買契約書は誰が作る?
不動産売買契約書は、取引の形態によって作成する人が異なります。
仲介取引では不動産会社が作成することが多い
不動産会社の仲介で取引する場合は、多くのケースで不動産会社が売買契約書を作成します。
売主・買主は、その内容を確認したうえで契約に臨む形になります。
自分で作成することもできる
個人間売買など、不動産会社を介さない取引では、当事者自身が売買契約書を作成することもあります。



司法書士として働いていたころ、当事者自身で作成した売買契約書を見る機会もありました。
中には、記載が不十分だったり、文章の意味が分かりにくかったりする契約書もありました。
ひな形があっても、その取引内容に合った契約書を作るのは、決して簡単ではないと感じています。
売買契約書を自分で作成する場合、契約条件や文言に少しでも不安があれば、事前に専門家へ相談する方法もあります。
ひな形を利用するときの注意点
インターネット上には、売買契約書のひな形が数多く公開されています。
公益社団法人 全国宅地建物取引業協会連合会(全宅連)も、不動産取引の実務で使われる売買契約書の統一書式を策定しています。
実際の契約書にどのような項目が並んでいるか、全体像を確認したい方の参考になります。
ただし、ひな形はあくまで一般的な内容にすぎず、そのまま使うと、実際の取引条件に合わない部分が出てくることがあります。
ひな形を使う場合も、自分たちの取引内容に合わせて、内容を見直すことが大切です。
不動産売買契約書と土地売買契約書の違い
「土地売買契約書」という言葉を見かけることもありますが、これは土地だけを売買する場合の不動産売買契約書のことです。
不動産売買契約書とまったく別の種類の契約書というわけではなく、対象が「土地のみ」であるか、「土地と建物」であるかという違いによるものです。
不動産売買契約書には印紙が必要?
紙の売買契約書と印紙税
紙で作成した不動産売買契約書には、印紙税がかかります。
印紙税の具体的な金額については、国税庁の情報をあわせてご確認ください。
電子契約の場合はどうなる?
契約書を電子データで作成する電子契約の場合は、紙の契約書とは異なり、印紙税がかからないという扱いになっています。
不動産売買契約書についてよくある質問
売買契約書はいつまで保管すればいい?
売買契約書は、買主にとって次のような場面で必要になる重要な資料です。
- 契約内容を確認するための資料
- 将来トラブルが起きた際に、当時の契約条件を確認する資料
- 将来その不動産を売却するとき、取得費などを確認する資料
買主本人について、「売買契約書を〇年間保管しなければならない」という一律の保管期間が法律で定められているわけではありません。
ただし、保管期間の決まりがないからといって、すぐに処分してよいわけではありません。
将来必要になる可能性を考え、長期間保管しておくことをおすすめします。
売買契約書を紛失したら再発行できる?
売買契約書を紛失した場合、まったく同じ契約書をそのまま再発行してもらえるとは限りません。
まずは契約の相手方や、契約時に仲介した不動産会社にコピーが残っていないか確認してみましょう。
自分で作成しても大丈夫?
契約書の作成自体は可能ですが、取引条件に合わない内容になっていたり、必要な条項が抜けていたりすると、あとから思わぬトラブルにつながることもあります。
不安な点がある場合は、無理に自分だけで抱え込まず、専門家へ相談することも検討してみましょう。
まとめ
不動産売買契約書には、売買代金だけでなく、引渡しや契約解除、住宅ローン特約、契約不適合責任など、重要な条件がまとめて記載されています。
内容は取引ごとに異なるため、署名・押印する前に、自分に関係する条件まで確認しておくことが大切です。






